岸田 登 (元会長)遺稿

国立駅に降り立つと、先ず風格のある大学通りが目に入って来る。この印象から国立は緑豊な素晴らしい町だ、ここに住みたいと思う人も多いと思う。しかし国立市全体で見ると、緑比率は26%、樹木だけに限定すると僅か8.7%しかない。この意味で大学通り、一橋大学のキャンパスは国立市にとって貴重な緑の財産になっている。

また大学の緑は教育環境に様々な恵を与えてくれる。一つは「防音効果」。元々キャンパス周辺は静かであるが、森があることによって更に静かになる。二つ目が「温度調節」。気温が上がると「蒸散」と云い、木の葉の裏にある「気孔」から水分を蒸発させ、その気化熱によって温度が下がる。三つ目は「酸素供給」。昼間は光合成によって炭酸ガスを吸収し酸素を提供する。四つ目は「フィトンチッド(木の精)」を放出することで森林浴の効果がある。更に緑は眼や心の疲れを癒してくれる等、様々な恩恵を我々に与えてくれる。この様に大学の先生方、学生の皆さんは無意識の中に非常に恵まれた環境で、研究、勉学されていると言う事が出来る。
ところが植物群は放っておくと極相になるまで徐々に動いて行く。「極相」とはその状態になるとそれ以上変わらない状態を言う。この動きを「遷移」と言う。遷移の間には人間にとって都合の悪い状態も当然ある。人間の一番都合の良い状態で遷移を止めるのが「手入れ」である。今、大学の森は手入れ不足で荒れている。この貴重な財産を後世に引き継いで行こうというのが植樹会の「思い」である。幸い大学当局も思いは同じで、大学緑地全体に関して、東京農工大学、福島司教授のご協力を得て、「国立キャンパス緑地基本計画」を作成し、緑化維持の計画性、永続性を図ることになった。
また折角綺麗な大学構内に相当のゴミが散見される。ゴミ清掃も環境美化の観点から、緑化維持と同時併行して実施するのが得策と考える。31周年を迎えた一橋植樹会は、先輩方の地道なご努力によって今日まで引き継がれ、今般の国立大学法人化を契機に、従来の「植樹中心」から「緑の環境保全」へと大きく転換することとなった。
先ず、如水会員には更に「母校の緑」に関心を持って頂き、大学当局の方針を充分踏まえながら、出来ることから取り組んで行く方針である。具体的には従来の活動の加え、大学が作成した「国立キャンパス緑地基本計画」に基づき、月一回の緑化維持、環境美化保全の現場作業をボランティア活動として開始した。今後はこの活動に学生諸君にも参加して貰い、教職員、OB、学生との新たなコミュニケーションの場が実現し、共同作業を通じて一体感が醸成出来ると期待している。また皆で作り上げた美しい緑の環境で、感受性豊な人材を輩出することが植樹会の遠大なる目標でもある。
樹木は我々人間よりずっと長生きする。母校の森も例外ではなく、この森を今後世話して行くには一個人では限界があり、植樹会を通して先輩から後輩にこの「思い」を伝えて、永続的に行動することは大きな意義があると思う。大学の法人化を契機に、教職員、OB、学生が一丸となって大学の緑を守って行くことが、「自然保護」、「教育環境保全」に繋がるものと考える。
この目的達成のために、従来の個人会員、団体会員(いずれも如水会員)に加え、今回新たに学生会員(会費免除)を設けたので、個人、団体に拘わらず多くの学生の皆さんに参加して頂ければ幸いである。このHPでも現場作業を含め参加申込みが出来るので、皆さんの参加を一橋植樹会一同、大いに歓迎したい。