植樹会理事 樋浦憲次(45経)

一橋植樹会から一橋大学への寄付講座として始めた「緑の科学」3年目が終了しました。
一橋大学への如水会寄付のキャリアゼミは多くの方々がご存知と思われますが、その他にも実に多くの寄付講座があるのです。今回この原稿を書くに当って私も参考迄に調べてみた処、その多さに吃驚でした。野村證券、三井住友銀行、ヤマトホールディングス等々の寄付講座がなんと数十にも及びます。私が学生だった昭和40年代とは様変わりです。
その多くの寄付講座の中でも、植樹会の寄付講座「緑の科学」は非常に異彩を放っていると思います。それは、理系の分野にまたがるユニークなそして面白い内容だからです。私も一部聴講し、実感すると同時に学生の反応も体感しました。
又、商経法社のあらゆる学部のあらゆる学年から受講が可能であり、その為か教室が独 特の雰囲気を醸成していると感じられたのも特徴の一つかも知れません。
4月上旬から7月末迄の夏学期毎月曜日の4限目に、福嶋 司東京農工大名誉教授(一橋植樹会顧問)、筒井泉雄一橋大商学部教授(大学教育研究センター長)、関 統造如水会事務局長(元商社マンにしてエネルギー分野に造詣深く青山学院大学でも森林とエネルギーについて講座を担当)、藤元晶子東京芸術大学助手(一橋大学出身で新生植樹会発足時から野鳥観察を続けておりキャンパスの野鳥を知悉)の4人の講師陣が、それぞれの専門分野をリレー式に繋いで15コマの講義(2単位取得)に仕上げたのですがその内容と狙いを簡単に披露します。
先ず、内容ですが、
<教室での講義>
緑の誕生と発展、植物の緑の機能等、緑の分布とその性質・現状と保護活動等、キャンパスの緑と自然と鳥、世界のブナ林と日本のブナ林-ブナの分布・ブナ林の復元等、緑の防火機能の歴史・防火効果木の研究等、植物・森林の効用等、水・エネルギー問題の重要性・今後の林業等、サクラの健康度調査の結果および今年度講義の総括
<フィ-ルド・ワーク及び実験>
キャンパスの「基本計画(後述)」を勉強しながらの現状観察、キャンパス内での管理作業実施、サクラ観察(〃)サクラの健康度観察(ダメージ調査)、植物の色素をタンポポの葉で実験(クロマトグラフィー)
となります。
狙いは、キャンパスの豊かな緑を題材に学生が自然への理解を深め、自然の強さや危うさを学ぶ事、又、キャンパス・ツアーやフィ-ルド・ワークを通して実際に緑(自然)を観て、触って、知り、そしてそれを守る事の重要性を認識し、自ら実践する人間になって欲しい、ひいては21世紀のリーダーに求められる地球環境を守ることを行動規範とするような人材の育成を図りたいとの思いにありました。 この願いは、「新生植樹会」の発足した11年前に遡ります。 8年の歳月を経て、大学の理解と承認を得て実現したものです。
成果の一つの尺度となる受講者数ですが、スタートした2012年は期待を遥かに超える181名にも及び嬉しい悲鳴を上げたものでした。 然し、現実にはキャンパスツアーやフィールドワーク実施に際し「適正規模を遥かに超えた」との反省に立ち、2年目からは100名以内に絞り込むこととし、今年度は、最終的に試験を受けた人数が81名でした。纏められている筒井教授は、①厳しく出席を求め、②試験にも手抜きは一切しない真面目な講義にも拘らず「不思議な現象」と、首を捻られています。提供している一橋植樹会としては誠に嬉しいことです。
受講した学生の感想を紹介します。
◎普段立ち入らないグランドの裏側にある様々な緑を回ったり、何気なく見ていた木々のウラ話が分かったり、今まで知らなかった一橋大の一面を知ることが出来て楽しかった。
◎文系理系の枠にとらわれない知識が習得出来た。
◎クロマトグラフィーの実験(タンポポの葉を使い葉緑素の分析)が貴重な体験だった。
◎グローバルに喫緊の課題のエネルギー問題がよく理解出来て良かった。
◎タヌキがキャンパスに増えてヘビを食べるのでヘビが減っていると聞いて驚いた。
等々、新鮮な驚きも含めた好意的な感想が殆どでした。
スタートしてから3年、試行錯誤の連続でしたが学生達の好意的反応も確かめられ、改善と信じて徐々に変えてきた方向に誤りがなかったと自信が持てました。来年度からは今年度の内容を礎に「観て、触って、知る」を基本により充実した内容の講座を提供して行きたいと考えています。
この機会に、改めて、「基本計画=一橋大学の緑地基本計画」について簡潔に触れたいと思います。 本件は今迄も繰り返し、採り上げられて来ましたが、基本計画は平成16年12月に大学で機関決定された一橋大学のキャンパスの自然を守る云わば、「緑の憲法」です。 計画立案に当っては植生管理学の権威の福嶋顧問に御尽力頂き、一橋植樹会もお手伝いし、実践にあたっては永年一橋植樹会が主導的役割を果たして来ました。 その結果、度々TVドラマや映画のロケにも使われる程に美しい姿に様変わりしました。しかしながら、一橋植樹会が数次に亘って実施した計画のレビュー作業の結果では、美しくは見えてもキャンパスの所々は、病み、衰えている現実が浮き彫りとなって見えてきました。 今回、受講した学生諸君には「サクラの健康度調査」を通じて実感して貰えたと思います。 彼等が認識を新たにしてキャンパスを観察し、将来、愛する母校の「緑の番人」として戻って来てくれたらと願っています。