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令和2年10月31日
ー 秋の大学構内の植物 ー
10月ももうすぐ終わりです。大分、朝晩の気温も低くなってきました。植樹会の作業への参加者数は依然として限られたままで例年のように月次の定例作業を開催できる状況ではありませんが、大学も構内整備のために意を尽くし、私たちの活動にもサポートをいただいています。10月の作業はあわせて6回実施し、皆さんが日頃あまりみることのない植物も、作業活動を通じ眼にすることができました。秋も深まりつつあるこの時期、「果実」をつけた植物が中心となりますが、ハンドボールコートや野球場周辺その他の場所で作業中に眼にした植物の紹介をしたいと思います。大学の構内にこんなにも野草が生育するのかと、認識をあらたにした次第です。
今回は、いずれも蔓性の一年草であったり多年草であったりする植物で、ウリ科の植物のカラスウリとスズメウリ、そしてキョウチクトウ科の植物であるガガイモ、サルトリイバラ科のシオデを、さらに異なるジャンルの外来植物であるヤマゴボウ科のヨウシュヤマゴボウを取り上げることにします。
1.カラスウリ
大学構内を歩いていてふと木に絡んだ蔓草を見上げると、オレンジ色ないしは朱色の楕円形の実を見ることがあります。カラスウリです。カラスウリは、原産地は中国や日本で、日本では本州・四国・九州に自生し、林や藪の草木に絡みついて成長するウリ科カラスウリ属の蔓性多年草です。別名を玉章・玉梓(たまずさ)、ツチウリ、キツネノマクラ、ヤマウリなどとよびます。
ウリ科の植物は、熱帯から亜熱帯にかけて約95属942種以上が分布するといわれ、日本には、5属10種が自生分布し、栽培種及び帰化種は多様で、トウガン、スイカ、キュウリ、カボチャ、メロン、ヘチマ、ニガウリなどがあります。カラスウリの名の由来はカラスが食べるからだといわれていますが、どうもそうではないようです。また、カラスウリの葉が大きく生育旺盛なので、絡みついた木を枯らしてしまうことから、枯らす瓜がカラスウリになったという説もあります。
4月から6月にかけて塊根から発芽、あるいは実生します。葉はハート型で3から5に浅く裂け、表面は短い毛で覆われていて光沢はありません。雌雄異株で、花期は7月から9月にかけて日没後から開花し、翌朝、日の出前にしぼむ一夜花です。花は見た目には雌雄の差はほとんどありませんが、強いて言えば、雌株より雄株の花数が多いことです。花弁は白色で4から6弁(主に5弁)で、やや後部に反り返り、縁部が無数の白く細い紐状になって伸び、直径7から10cm程度の網あるいはレース状に広がります。このように目立つ花になった理由は、受粉のため夜行性の「ガ」を引き寄せるためであると考えられ、送粉者は大型のスズメガです。カラスウリの花筒はとても長いため、スズメガのように長い口吻を持った昆虫でないと花の奥の蜜には到達できず送粉できません。
果実は概ね卵型形状で、直径は5から7cmです。熟す前は縦の線が通った緑色をしていますが10月から11月に熟し、オレンジ色ないし朱色になり蔓にぶらさがっている様を見ることができます。薄い果皮を破ると、内部には黄色の果肉にくるまれた、カマキリの頭部に似た特異な形状をした黒褐色の種子があります。この果肉は舐めると一瞬甘みを感じるものの非常に苦く、人間の食用には適しません。鳥がこの果肉を摂食し、同時に種子を飲み込んで運ぶ場合もありますが、特にカラスの好物ということではありません。
カラスウリの特徴的な形をした種は、中心部は盛り上がったように厚みがあり、そこから3方向に突き出した突起があります。この形状が大黒様のお腹のようで縁起がいいといわれています。また、カラスウリの種はその形が「結び文」のようだということで、玉章(たまずさ)という別名もあります。結び文とは、おみくじのような結び方をした手紙のことで、古くは恋文に使われたということです。玉章というのは、この結び文のことをいうそうです。果たして写真で見る形はどうでしょうか?
地下にはデンプンやタンパク質をふんだんに含んだ芋状の塊根が発達しており、これで越冬します。夏の間に延びた地上の蔓は、秋になると地面に向かって延び、先端が地表に触れるとそこから根を出し、ここにも新しい塊根を形成して栄養繁殖を行います。
カラスウリと同属にキカラスウリ(黄烏瓜)があります。カラスウリと異なり果実は黄色です。カラスウリと同様に雌雄異株で、北海道から九州に自生します。葉は切れ込みが入ったハート型で、表面は光沢をもち、葉の表面に多数の短毛を持つカラスウリと容易に区別できます。6月から9月にかけての日没後から開花し、翌日午前中から午後まで開花し続けます。花は白色、あるいはやや黄味がかった白色で直径5から10cm程度で、花冠は3から6枚に裂けます。花の先は糸状になり、長さはカラスウリよりも総じて太いのが特徴です。雌花はつぼみの段階で子房を持っているため、つぼみが付いた時点で、その株の雌雄が判別できます。主に夜行性のスズメガが飛来し送粉者となります。結実した果実は緑色で、表面には若干の凹凸がある。結実後2ヶ月程度で黄変し、9から11月頃には黄熟します。熟した果実の種子周囲の果肉部分には甘みがあり食べる事ができますが、メロンと同じように、過熟により舌や口内の粘膜を強く刺激する物質が生成するため、注意がとのことです。種子はウリ科に多い扁平な楕円形です。カラスウリに似た芋状の塊根を持ちデンプンを多く含みます。皮層を除いた塊根は栝楼根(カロコン)という生薬で、解熱、止渇、消腫などの作用があります。柴胡桂枝乾姜湯、柴胡清肝湯などの漢方剤に使われます。種子を日干しにしたものは栝楼仁(カロウニン)といいます。澱粉を多く含む塊根をつぶし、何度か水でさらして乾燥させ、天花粉に加工し、おしろいの原料、あせもの予防、治療などに使用しました。熟していない果実は、塩漬け、粉漬け、汁の実の材料となり、初夏から夏の若い芽は湯がいてあえ物や炒め物に、また生のまま天ぷらや煮物に利用できます。
2. スズメウリ
スズメウリ(雀瓜)は、ウリ科スズメウリ属の1年草です。日本の本州・四国・九州と韓国の済州島に分布する在来種です。名の由来は、ウリ科カラスウリ属に対して小さいことからそうよばれています。果実が雀の卵に似ているからという説もあります。スズメウリは野球場北側のハンドボールコート入り口付近で眼にしました。スズメの卵ほどの小さな丸い実をつけていました。
山野に自生し、茎は細く、蔓性で長く伸び、巻き鬚で他の樹木などに絡みつきます。葉は互生し、柄があり、長さ3から6cm、幅4から8cmの卵円形から三角状卵心形で、基部は心臓形をし、浅く3つに裂ける場合があります。雌雄同株あるいは異種で、花期は8月から9月で、雌花、雄花共に、葉腋から径5から7mmの白色で深く5裂(まれに4裂や6裂)した花を単生します。雌花は蕾の時から楕円形の子房が目立ちます。果実は液果で、2から5cmの非常に細い柄があり下垂します。球形か卵形で長さは1から2cmで、初め緑色で、熟すと灰白色になります。種子は扁平で長さ5から6mmで左右2列に並び、16個あります。蔓の先端が地中に潜り肥大した塊根を作って越冬し、カラスウリなどと同様の生活戦略を見ることができます。
3. ガガイモ
キョウチクトウ科の植物であるガガイモは、日本の北海道・本州・四国・九州のほか、朝鮮半島、中国の東アジア一帯に分布し、各地の山野に自生し、日当たりのよい草原や道端などに見られ、日当たりと排水がよく、肥えた土地を好む性質があるます。古名を「カガミ」または「カガミグサ」といい、夏の季語として親しまれてきました。いずれの名も語源には諸説あり、イモというのは根ではなくて実の形によるともいわれ、また割れた実の内側が鏡のように光るのでカガミイモ(鏡芋、輝美芋)の名がつき、これが訛ってガガイモとなったという説もあります。平安初期の『本草和名』では、中国語名の蘿藦が「ガガイモ」を表す漢字としてあてられ、やがて蘿藦の表記が用いられるようになりました。日本神話では、大国主命と一緒に国作りを行った少名彦名命が天之蘿摩船(あまのかがみのふね)に乗ってきたといい、この舟がガガイモの実を2つに割って作った小さな舟であるといわれています。
つる性の多年草で、長い地下茎があり、その先に茎を出しますが、地下茎がちぎれても、地下茎の一部分から容易に繁殖することできます。つるは右巻きで、葉は対生し、やや長い心臓形で全縁、葉脈が目立ち、葉身の表面は濃い緑色、裏面は白緑色をし、葉や茎を切ると白い乳液を出します。夏に、葉腋から長い花柄を出した先に集散花序がつき、淡紫色から白色の花が10数個ほど咲き、花冠は5つに深く裂けて星型に反り返り、花冠の内側に毛が密生します。果実は大型の紡錘形の袋果で、長さは8から10cm、表面にイボがあり、熟すと割れて舟形になり、中から白い毛の生えた種子が出ます。繁殖力が旺盛で、一度生えると雑草化します。
かつては種子の毛を綿の代用や朱肉に用いたこともあるということです。種子と葉は生薬になり、初秋に実を採って天日乾燥して種子を取り出し、葉は夏に採取して陰干しして利用されます。乾燥させた種子は蘿摩子(らまし)といい、強精や止血に、また葉は解毒や腫れ物に薬効があるとして用いられます。民間療法では、強精目的に羅摩子の乾燥粉末1日量2から3グラムを1日2回服用する用法が知られ、また切り傷の止血には種子の白毛をつけるとよいとされ、腫れ物には葉の粉末をクチナシの粉末(サンシシ末)と一緒に酢で練り合わせて、湿布する方法がとられているとのことです。
4. シオデ
シオデはサルトリイバラ科シオデ属の多年生草本です。名は、通説ではアイヌ語でシュオンテといったことに由来するといいます。漢字では「牛尾菜」と書きます。第2研究館の南側の整備作業の際に眼にしました。中国、台湾、フィリピンなどにも分布し、日本では北海道から九州まで分布し、山野の林縁にまばらに生育しています。
雌雄異株の多年草で、茎は草質でよく分枝し、つる状に2から4mに伸び、葉腋から托葉が変形した1対の長い巻きひげを出して他の草や木に絡みつきます。葉は長さ1から2.5cmの柄があって互生し、長さ5から15cm、幅2.5から7cmの卵状楕円形で基部は心形で先は尖っています。表面にへこんだ5-7個の縦脈があり、それをつなぐ網状の小脈があり、質はやや厚く、表面に光沢があり裏面は淡い緑色をしています。
花期は7月から8月で、葉腋から長さ7から12cmの柄を出して球形の散形花序をつくり、淡黄緑色の花を多数つけます。花被片は雄花、雌花とも6個で離生して反り返り、雄花は直径約1cm、花被片は長さ4から5mmの披針形。雄蘂は6個、葯は線形で長さ1.5mmです。雌花は直径約7mm、花被片は長さ2から2.5mmの長楕円形です。果実は直径約1cmの球形の液果で黒く熟します。
秋に根茎を掘り起こして、良く洗って泥を落として、天日で乾燥させたものを生薬で馬尾伸筋(ばおしんきん)といいます。通経、関節炎、リューマチなどの症状には、乾燥した根茎を煎じて、1日3回に分けて服用するといい、また、血行促進、関節炎、リューマチ、腰痛などには、根茎の粉末を服用する と聞くといわれています。新芽や若葉を採取して、熱湯でかるく茹でて水にさらしてから、おひたし、あえもの、酢の物、汁の実などや、マヨネーズあえ、サラダ、バター炒めなども癖が無く食べることができ、アスパラガスによく似た味で、とても美味であるといわれています。また、若葉は、薄くころもをつけて天ぷらなどにしても美味しいということです。
5. ヨウシュヤマゴボウ
大学の構内でよく眼にする外来の植物です。北アメリカ原産の多年草で、明治初期に渡来し、空地や道端などでも普通に見られるヤマゴボウ科の植物です。漢字では「洋種山牛蒡」と書き、別名をアメリカヤマゴボウといいます。名前の由来は、根が牛蒡に似ていて、里山や山地で育つというので「山牛蒡」で、西洋のものなので洋種山牛蒡(ヨウシュヤマゴボウ)と名づけられたといわれています。ヤマゴボウやヨウシュヤマゴボウは有毒なサポニンの一種フェトラッカや硝酸カリを含み、特に根に多く、誤食すると嘔吐や下痢などの中毒症状を起こしますので要注意です。
葉は互生で長さ10から30cmの卵状長楕円形で先はとがり、鋸歯はありません。触ると柔らかく、茎が赤いのも特徴です。花期は6から9月で、茎先に総状花序を出し、花径が5から6mの小さな花が根元の方から垂れ下がる先に向かって開いていきます。白色の花弁のようなものは、花びらではなく5枚の萼片です。緑色の小さなカボチャのように見えるのは、雌蘂です。その周りに雄蘂が10本放射状に並びます。
ヨウシュヤマゴボウは、雌雄異熟といって、雄蘂の葯の花粉がついているうちは、雌蘂の先が閉じています。そして雄蘂の花粉がなくなると、中央が10に裂けて柱頭が開き、受精の準備完了となります。次の世代に強い子孫を残すべく、自家受粉を避けるための仕組みです。夏季に扁平な果実を付けた後に初秋に黒く熟してゆきます。熟した果実は液果で、柔らかく、潰すと赤紫色の果汁がでます。この果汁は強い染料で、昭和後期の日本の小学校の理科の教材として色水を作るのに使われ、「Ink Berry」と呼ばれています。衣服や皮膚に付くとなかなか落ちないので要注意です。
種子にも毒は含まれますが、周りの液果は鳥たちには安全で格好の餌であり、種子は鳥によって散布されます。
参考文献
『野に咲く花』 山渓ハンディ図鑑1
『松江の花図鑑』 https://matsue-hana.com
(飯塚記)
What's New
現在も大学の授業はオンラインで行われていますが、ゼミと語学授業の一部は教室で行われる他、部活動の部分再開もあり出入りする教職員・学生の数も随分と増加のように見受けられます。学食のメニューもほぼ通常に近いものとなりましたが、テーブルの席は間を置く設置で 料金支払いのレジは1箇所のみ まだまだ如何にノーマルならざる状況かと感じさせられる次第です。
我々の作業も先月来変わらず 午前・午後で同時に作業する人数は6人までの制限下で行われており、11月に組まれていた9日の一橋祭準備作業と13日の定例作業は中止と致します。また12月以降の定例作業についても 現在確たる見通しには残念ながら至っていないと申し上げざるを得ぬかと考えます。
一橋祭ですが 今年は11月21日から23日の日程で「無観客、オンライン」開催となりました。植樹会関係では 一橋祭運営委員会が現在申請中の 国立駅旧駅舎の使用が認められた際、クラフト作品の展示と材料配布他 植樹会活動の紹介等を学生理事が企画・検討しています。 (編集子)
2006年の33回植樹会総会以降の総会資料とホームページのトップページ画面を 右タブの「バックナンバー」に纏めて収めました。閲覧・検索にご利用いただけますれば幸いです。
●臨時作業
10月は臨時作業を6回計画・実施いたしました。その内2回はハンドボール部と硬式野球部の部員諸君との共同作業です。
先月末の作業と併せその様子をお伝えいたします。(10月31日の報告は次月とさせていただきます)
9月30日(水)
・西プラザ西側からひょうたん池周辺の雑草の刈取りとツタ草取り・磯野研究館周囲と図書館時計台棟の東側と南側の雑草の刈取りとツタ草取り整備
10月5日(月)、10月7日(水)
・ハンドボールコート周辺の雑草の刈取り及び整備(5日)と コート内部と周辺のツタ草取り等整備(7日)7日にはハンドボール部学生21名が参加しています。
・大学旧正門付近の整備
10月14日(水)
・野球場周辺の草刈り、ゴミ袋撤去等の整備作業。硬式野球部学生35名が参加しています。
10月20日(火)
・東キャンパス東1号館周囲の雑草の刈取り、植え込みの刈込みとツタの除去
・西キャンパス国際交流館東側の雑草の刈取りとクズの除去
10月26日(月)
・第2研究棟南側の雑草の刈取り、小幼木とツタ植物の除去
・国際交流館東側の雑草の刈取りと クズの除去
作業参加者:八藤(40経)、關戸(40社)、樋口(41法)、津田(42商)、徳永(42商)、高原(42社)、湯川(42社)、 谷中(45社)、川崎(46経)、小槙(46法)、林(47経)、芦田(47社)、河村(49経)、小山修(49法)、須藤(50商)、 飯塚(50経)、木田(50社)、秦(50社)、藤原(51商)、村上(52法)、蔵屋(53商)、善宝(53法)
●ナラ枯れ病
キャンパスのコナラの木20本がナラ枯れ病に冒され伐採処理がなされた事を 先月のホームページでこの病気の脅威の詳細な説明と併せて飯塚副会長からレポート申し上げましたが、従来は日本海側が主発生地域のナラ枯れ病が秋田県北西部から青森県南西部の世界自然遺産白神山地で見つかり その深刻さに改めて気付かされる事になっています。
米粒大の甲虫「カシノナガキクイムシ」が幹に病原菌を持ち込む事で葉が変色し枯死する樹木の伝染病ですので、コナラの木を根元近辺で伐採後 殺虫・殺菌処理を行い ビニール被覆を被せた後上に土をかける処置を行いますがその様子を良く見ていただけるように 改めて写真を2枚掲載いたしました:
●アカマツ基金へのご寄付
次の方々からご寄付をいただきました。誠にありがとうございます。趣旨に沿い大切に使わさせていただきます。
6月:野口健彦(36商)
9月:嶺英俊 (48社)
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